ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

「アジア安保と日米安保-国際レジームの可能性-」はじめに松尾寛アジア地域で現在起こっていることは規制のパラダイムでは捉えきれないものである。170年代後半から80年代にわたり注目を集め続けた世界システム論的発想(パワー交代モデル)は、経済的にも政治的にも同地域には当てはまらないのである。東洋資本主義の膨張は「中核・半辺境・辺境」の世界システム論の硬直した図式にはおさまらないものである。2また覇権国(ヘゲモニー)の興亡によって、ヘゲモニーの新たな発見により世界秩序が形成されるという見方も、覇権後の同地域内での政治的結束の進展、それを推し進めるような相互依存の深化の現状をみると説得力に欠くと言わざるを得ない。昨年7月にバンコクで開催され、常設機構化への第一歩を踏み出したASEAN地域フォーラム(ARF)は冷戦後・覇権後の同地域の安全保障の多国間的枠組(レジーム)として注目される。世界システム論の旗手、I.ウォラスティーンのサイクル的な歴史観に依拠すると、覇権国とその挑戦国との間には必ず大戦争が起こり、その結果として新たな秩序が生まれることになる3のだが、現在アジア・太平洋地域にはOSCE(全欧安保協力機構)にならい多国間的安全保障レジーム形成の動きがあり、その動きは古典的なパワー・ポリティクスの終焉を意味し、サイクル的な国際政治観との決別をも意味している。日本は現在、アジアの一員としてARFに参加しており、枠内でのリーダーシップ発揮に努めている。新たなアジアの政治空間は果たして平和と安全を絶対保証し得る共同体に変容できるのであろうか。さて、島国国家日本は日英同盟下の20年間、さらに日米安保体制の下では40年間その平和を守り続けてきた。その二国間の安全保障の枠組としての日米安保体制は今後再定義すべきか、はたまた解消すべきかの論争の渦中にある。J.ナイ米国国防次官補を中心と3881 I.ウォラスティーン『近代世界システムⅠ、Ⅱ』川北稔訳岩波書店1981年、同『ワールド・エコノミー』山田鋭夫他訳藤原書店1991年。2徐照彦『東洋資本主義』講談社1990年257-258頁。3 I.ウォラスティーン「資本主義世界経済の将来と日本」『国際問題』第315号1986年。