ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第12回優秀賞次に「援助を通じての改善」では、経済的援助の活用により紛争の平和的解決が促進される可能性が述べられている。経済的な困窮が時として紛争の発端となりうるのは94年度の事務総長の年次報告書「平和と開発の構築」で指摘されている通りであり、実際的で有効な紛争解決手段の一つとなり得ることが期待される。関連機関をこの目的下で活用するための行政的メカニズムの調整が待たれる。「軍事力の行使」(Use of military force)では、国際連合の発足以来の懸案事項である「国連軍」の常備の必要性が論じられている。湾岸戦争の事例が示す様に、現在でもなお武力による侵略が公然と行われる危険性は存在している。その様な場合の対応として、現在では先ず憲章第39条による「平和の破壊」認定が行われたあとに、第41条に従って経済的制裁が課される事になるが、現状では国連が主体的に軍事的制裁を実行することは出来ない。その代わりに、集団的自衛権もしくは地域的安全保障条約等を援用する多国籍軍に対して国連が権威づけ(authorize)を行うという方式が定着しつつある。国連が外部の軍隊を一時的に「借り上げる」という形での制裁方式に何ら問題がないとすれば、国連軍の設置の必要性は認められないであろう。しかしながら、個別の紛争毎に異なる場所からの軍隊の派遣を検討するのではいかにも不安定である。また、現在の方式は軍備管理能力を保有しないままの「限定的で小さな」国連を将来像として捉える立場に即したものといえるが、本論文の結論で述べる様に、私はその立場には賛成しない。「平和実施部隊」(Peace-enforcement units)では、平和維持活動の延長として、国連がその実力部隊を背景として停戦合意を強制させる試みについて提案されている。いわゆる「憲章第7章下のPKO」として微妙な位置にある活動であり、事務総長の指揮下で暫定的かつ限定的(国内紛争が対象となる。)ながらも、軍事的な強制措置であるという点では、上記の「国連軍」に準ずる働きを行う。しかしながらこの試みは現在必ずしもうま4 4 4 4 4くいっていない。理由は幾つか存在するが、最も重要な理由は、この部隊が中途半端に武力を行使するためであろう。文字通り、血で血を洗う戦場において事態を収集するためには、完全にクリーンな立場から説得に徹するか、さもなくば断固たる決意の下で力による349