ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第12回優秀賞抗議表明の効果は乏しいし、地下核実験までを禁ずる国際法が実定法上存在しないため、ニュージーランド等が採ろうとしている国際司法裁判所への提訴という手段も有効に働く余地が少ない。そこで、今秋の国連総会に提出される核実験停止決議案の行方が注目される。何故なら、国際会議の場における審議の結果としての抗議は、それが国際社会全体の意思として表明され、決議採択時の賛成国の数次第では国際法上の準立法的な効果が発揮されるためである。国際社会の一般利益の実現には現在でもなおその様な手続きを経る必要があるため、個別国家の役割は限定的なものとならざるを得ない。そこで、国際組織のより十全な機能が否応なく期待されることになる。では、国際組織は個々の国家の国内問題に対して何処まで介入が許されうるのか。国連4 4 4憲章2条7項では「本質上いずれかの国の国家管轄権内にある事項に干渉する権限を国際連合に与えるものではなく、…」と規定して、その点の微妙な判断を国連自身に委ねている、と解釈される。これはいわゆる「必要な推論に基づく機能(implied power)説」と同様、国際組織の無制限の活動を肯定しかねないが、ここではそのプラスの面だけを意識する。従って、国際組織は実定国際法上、非常に大きな潜在的可能性を保持しているといえる。これは個別的な国際強力がもつ限界を克服しうるものとして注目に値する。2各論AN AGENDA FOR PEACEの検討東西冷戦の終了は国際社会の強固な断絶状態に終止符を打ち、世界のどの地域の問題に対しても均一に国際社会全体が介入可能な状態を創り出した。その状況の中で国際連合は憲章作成当時に期待されていた役割を完遂する機会を取り戻している。そして、現在社会の多様な問題への取り組みにおいて一定の成果を挙げる一方で、古典的な安全保障の分野においては憲章第42条に規定する軍事的強制措置が取れない状況下では非常に限定的な役割しか果たせないでいる。「平和への課題」(1992)とその95年の補足版では、この様な平和と安全の維持の分野347