ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

み重ねの歴史でもあった。換言すれば『競争』と『連帯』の揺返しの間で、共存共栄の道を見出そうとする幾多の夢想と実験において、結果的に挫折と失敗を繰り返してきたということである。『競争』は、人類の発展エネルギーとして不可欠のプラス面を持つ一方で、競争相手への対抗手段としてマイナス方向の魔力も生み出し、その最たる形態として戦争という破壊行為まで惹き起こすことさえ多々あった。多分、人間が複数存在し互いに意識しあう状況になった原初の頃より、他者に対する競争意識・優越への願望は既に有していたことであろう。そして、周囲の者より相対的優位に立ちたいとの本能的な欲望と、競争状態から逃避したいという連帯を求める意識のはざまで、常に揺れ動いてきたものと思われる。更に、その社会の構成単位が3者以上になった時「競争戦略としての他者との協調」も選択肢の一つとして浮上してきたものと推察される。また、利害関係の相反する敵対集団が大きければ大きいほど、それに対抗するため共通の利益を追求しうる味方集団の範囲を拡大する努力が払われ、権謀術数のなかで合従連衡の試みが繰り返されてきた。その協調の輪は、古くは家族・親族・血族内での絆から始まり、集落と集落の間の友好関係、地方領主・豪族間の協力関係、国家間の同盟関係と、次第に規模を拡大しながら、『連帯』システムの精度を高めることを追求して発展してきた。これは裏返してみると、これらの味方集団に敵対する勢力の存在、すなわち、脅威の存在が徐々に大きな枠組みの中で、現実感を持って認識されるようになってきたと言うことである。そして、それらの連帯システムのなかで歴史上最大規模の存在となったのが、国際連合という名の国家連合体である。しかしながら、その発足の目的にもかかわらず、国連による社会的連帯が世界秩序の機軸となっていないことは、特に数年前まで明らかであった。つまり、それまでは冷戦構造の下で、西側諸国対社会主義国家群という構図の対立軸が明確であり、相手方陣営に対する競争意識・脅威が常に存在したため、各陣営内での連帯意識が比較的容易に醸成されえたからである。332