ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第9回最優秀賞る加盟国の協力に依存せざるを得ない。主権国家を中核としている国家の下で、国家による自由の抑圧や人権侵害に対し個人を保護しようとするにも、国家に頼らざるを得ないという矛盾が依然としてあることは否めない。関連する国連憲章の改訂を行い、安保理のみの権限を付与した「人権保障理事会」を設置し、前述の矛盾を解消することが求められている。5.地球環境問題軍縮問題に代わって国際政治の政治的緊張の空白を埋めるのは地球環境問題である。地球環境問題を国際政治の枠組みの中に最初に組み込んだのは、88年秋の国連総会におけるシュワルナゼ・ソ連外相の演説であった。ここでシュワルナゼは、まず米ソ核軍縮交渉の進展と各地の地域紛争の終結に触れたあと、そもそも軍事力による安全保障という国際政治の枠組みそのものがアナクロニズムと化したのであり、現在の緊急課題は地球環境問題であると言明した。「環境カタストスフの脅威という前にあっては、二極化したイデオロギー的世界という対立図式は却下される。生命圏(biosphere)には、政治ブロック・同盟・体制という区切りなど一切存在しない。すべての人が同じ気象体系を共有しており誰一人として、環境防衛という自分だけの孤立した地位に立てるわけではない。」現在の地球環境を深刻化させた原因の大部分は、先進工業国がその大量生産、大量消費をともなう経済的拡大のなかで生み出したものであると言ってよい。ところが、世界的な経済的拡大の果実、すなわち経済成長の過程で蓄積された富と便益の大部分は先進国が享受している。現在の途上国は、国民が日々緊急に必要とする基本的なニーズに応えることに追われている。したがって、地球環境対策のために乏しい国家財政をふりむける余裕はとてもない。むしろ「地球環境安全保障」のためには、先進国から途上国に対し、広義の開発の必要性を満たすような相当大規模かつ継続的な財政資源の移転を拡大する必要がある。また、途上国が主張するように、環境問題をとりあげるのであれば、途上国自身の発展の最大の制約であり、環境破壊の根本的原因として深く結び付いている貧困、低開発、社31