ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第11回努力賞と各地の地域紛争の終結に触れたあと、そもそも軍事力による安全保障という国際政治の枠組みそのものがアナクロニズムと化したのであり、現在の緊急課題は地球環境問題であると言明した。「環境カタストスフの脅威という前にあっては、二極化したイデオロギー的世界という対立図式は却下される。生命圏(biosphere)には、政治ブロック・同盟・体制という区切りなど一切存在しない。すべての人が同じ気象体系を共有しており、誰一人として、環境防衛という自分だけの孤立した地位に立てるわけではない」。現在の地球環境を深刻化させた原因の大部分は、先進工業国がその大量生産、大量消費を伴う経済的拡大のなかで生み出したものである。ところが、世界的な経済拡大の果実、すなわち経済成長の過程で蓄積された富と便益の大部分は先進国が享受している。現在の途上国は、国民が日々緊急に必要とする基本的なニーズに応えることに迫われている。したがって、地球環境対策のために乏しい国家財政をふりむける余裕はとてもない。むしろ「地球環境安全保障」のためには、先進国から途上国に対し、広義の開発の必要性を満たすような相当大規模かつ継続的な財政的援助の拡大が望まれる。また、途上国が主張するように、環境問題をとりあげるのであれば、それは途上国の発展にとっての最大の制約であり、環境破壊の根本的原因として深く結び付いている貧困、低開発、社会的不公正、不適切な自然資源の管理、一次産品の交易条件などの問題と一体として議論すべきである、という声にも傾聴すべき点がある。地球環境問題では、それが国を越えるという理由で、国際機関の強化や創設が繰り返し主張されるようになって久しい。シュワルナゼもいうように、国連環境計画(UNEP)を安保理なみに引き上げるか、安保理なみの「環境保全対策理事会」を設置して解決を急ぐべきである。終章新時代にふさわしい「国連憲章」の策定ポスト冷戦の新時代を迎えたいま、国連憲章前文は新時代にふさわしいものに改定され321