ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第11回努力賞を断った日本を世界の人々はどうみるであろうか。従来、PKO、多国籍軍とも米国中心であることを考えると、米国青年に犠牲者が多くなることは当然予想される。米国政府は現在、「非軍事貢献」での日本の常任理事国入りを支持している。しかし、将来、日本への批判の声があがることは間違いない。さらに、次の二点も無視できない。一つは、米国上院の「日本が軍事的貢献を行えるようになるまでは、米国は日本の常任理事国入りを支持すべきではない」という意志表明である。二つ目は、日本と同様に常任理事国入りを表明しているドイツとの比較である。ドイツは常任理事国になるには、非軍事貢献では不可能であり、かえって国益を損なうとの判断から、「独軍を人道目的のためにNATO域外に派遣する」という国会決議を行った。この決議を受けて昨年7月にコール首相が常任理事国入りの希望を表明したのである。この日本とドイツの違いは将来、両国の国際信用に決定的な差異と影響を生じることになる、と考える。昨秋の第48回国連総会で設置された「安保理改革作業部会」で準常任理事国制度が議論されたことは前述した。準常任理事国とは、ある特定の期間は拒否権などの特権を与えない理事国のことである。日本は、国連改革の中で準常任理事国の設立を率先実現し、自らその立場になることを希望すべきである。準常任理事国ならば、非軍事的貢献でも許されるのではないか。わが国の政治家もマスメディアも、国連改革といえば、日本の安保理「常任理事国入り」と憲章の旧敵国条項廃棄にしか関心を示さない。日本の将来を見据えて、いま冷静に考えてみることが肝要である。7.人権の問題狭義の安全保障の範囲を越えるが、国連憲章の大きな特徴として、平和と人権についての不可分性の認識がある。ここには、国内において人権を抑圧する政府が、同時に対外的には最大の人権侵害であるところの侵略戦争を引き起こすこと、即ち人権抑圧国家=平和破壊国であるという歴史の教訓が生きている。国連憲章の人権決定は第二次大戦の誘因となったナチズム、ファシズム、軍国主義、超国家主義による蹂躪の歴史を教訓として差別319