ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第11回努力賞3.安保理の改革の必要性と今後の方向第2次大戦中につくられた国連憲章が、平和と安全の維持を国連の最優先の目的としたため安保理、特に常任理事国に特別の権限と地位を与えている。国連憲章が、国際紛争を平和的手段によって解決することを一義的に志向していることは明白であり、それが望ましいことは議論の余地がない。しかし、安保理常任理事国に付与されている現状の特別の権限と地位が果して妥当なものかどうか、は再検討の必要がある。その理由の第一は第1章の第五で述べたように、現行の安保理構成及び常任理事国制度の前提条件は消滅したのである。とすれば、安保理構成及び常任理事国制度の見直しは必然である。第二は、すべての加盟国が集まる国連総会は一応あらゆる問題を扱うが、基本的に討議と勧告の場でしかなく、予算や内部組織に関係する事項を除いて拘束力のある決定権限を持たない。肝心の平和の維持でも安保理が優先的に責任を持ち、総会は二次的存在にすぎない。これは理不尽である。第三は、五大国が従来から世界の安全保障に責任ある行動をとってきたかというと、必ずしもそうとはいえない。五大国はこぞって第三世界へ膨大な武器を輸出してきたし、核保有国であるという事実を見逃すことはできない。この点から、五大国に過当する権力を与える現行の安保理中心のシステムを持続することは大きな疑問である。因みに、現在、日本の安保理常任理事国入りが議論されているが、世界の大国のうち「死の商人」を公然とは存在を許さないのは、「武器輸出禁止法」がある日本だけである。あわせて、日本は「非核三原則」を国是としている。日本の安保理常任理事国入りの問題については後述する。安保理の実態を如実に示したのは、湾岸戦争のときであった。湾岸危機に際して安保理の実際の行動によって明らかになったのは、五常任理事国の同調によって安保理の意思決定が実質的に決まるという冷厳な事実であった。ソ連消滅後のロシアはアメリカと協調し中国が柔軟になった現在、安保理において拒否313