ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

後のトランスナショナリズムへの途は、従来の国連中心主義では突破できないことは明白である。その三は、国家的なアイデンティティが相対的に低下し始め、代わって地域的・宗教的・民族的・歴史的に多様で多層的なアイデンティティが顕著になったことである。例えば、ECのようなイニシャル化した超国家組織や新たな地域連合が出現し、その一方で、国家システムの下で今まで虐げられてきた小さな民族・地球共同体の自立がますます強まった。第九は、国連は従来の紛争の事後処理から、未然防止、予防外交へとシフトすべきである。この観点から、「ガリ構想」(1992年6月発表)についても検討する価値がある。将来的には、ガリ構想を発展させ、国連警察軍・国連常設軍的なものを早期に創設しなければならない。また、当面必要に迫られて設置された平和維持活動(PKO)は現憲章に明記されていない。第6章「紛争の平和解決」と第7章「強制制裁」との間の措置ということで「6章半活動」といわれている。PKOに関する規定が憲章に明記されねばならない。第十は、国連の組織全体が均衡と調和をもって効果的に機能していない。いわゆる機構の肥大化と硬直化がある。関連機構組織の合理化や改革が必要である。その一方で加盟国政府の取り組み姿勢を含む努力が非効果的である。また、多数の国が通常予算や激増している平和維持活動費の滞納や引き延ばしにより国連の財政危機が依然として続いている。第十一はひと口に国連改革といっても、その内容は多角的・多面的である。これを整理して論考しなければ、混乱が起き議論がかみあわない。川辺一郎氏によると、混乱を防ぐために、国連改革は、少なくとも次の分野に分けて考える必要があるという〔川辺一郎著「国連と日本」(岩波新書)〕。一つは、国連の性格・活動分野やあり方の改革である。例えば、ガリ事務総長が国連が積極的に紛争に関与することを提唱していることなどがあげられる。二つは、国連機構とくに事務局の改革があげられる。国連の行財政改革などはここに入る。三つは、国連の政治的状況の改革である。米国の国連支配への批判、日本の安保理入り、310