ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第11回努力賞代の真の「主権者」なのだという観点に立つなら、国連の民主主義も、それに符合するものになると考えられるからである。第六は、国連は超国家的な利益追求の主体とならなければならない。国連に先立つ国際連盟の場合には、そもそも地球的諸問題の存在も希薄で、基本的に主権国家間の利益調整にとどまるものではない。第七は、安保理の構成及び常任理事国制度の問題である。現行の安保理の構成及び常任理事国制度は国連創設時の世界を前提に構想されたものである。しかし、加盟国数が184を数え、さらに旧枢軸国も50年の間に民主的かつ平和を志向する国家に変貌を遂げた今日、現行の安保理の構成及び常任理事国政度の前提条件は消滅したといえる。また、安保理の意思決定過程とその決定(各種決議)自体が、果して民主性と合理性と実質性を有しているのか、きわめて疑問である。この問題こそが、安保理改革論議の原点である。第八は、ポスト冷戦時代における国際社会の変容についての認識である。国際環境の中で冷戦の終焉がもたらすインパクトはきわめて強く広い。その一は、核兵器を頂点とする世界軍事秩序による覇権維持が失効し、東西軍事対立の緩和によって地域の均衡が崩れた。米ロの重しが外れた結果、国家の枠組みは流動化し、民族や宗教、人種による分裂・再編の動きが加速しており、各地で民族紛争や宗教上の紛争が多発している。また、軍事力の優位性が後退し、経済力・技術力が相対的に増大した。その二は、国民国家システムの変容とその空洞化が避けられなくなったことである。上の第四で述べた地球環境、人口、人権…など非軍事的脅威の多くは、もはや単なるシングル・イシューではなくなり、複合化し多重化しあうようになった結果、これらの問題領域に民衆が脱国境的なかたちで参画するようになった。政治的概念である国民と文化的概念である民族と、人種的血縁的共同体的アイデンティティにもとづくエスニック・グループとが社会生活空間の中で、さまざまなかたちで複雑に絡みあわざるを得なくなったのである。この場合、ナショナリズムのトランスナショナリズムの相克が今後の国際政治を規定していくであろうが、トランスナショナリズムが長期的な趨勢であることは間違いない。今309