ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

から自治体へ、そしてさらに個人へと広がってくるであろう。こうした傾向を「民際交流」という言葉で表現するようになって久しい。国家レベルの交流が権力的であるのに対して、「民際交流」は非権力的である。「民際交流」は、従来の国家レベルでは実現し得ない広がりと深みをもっており、国家間では非友好的な関係であっても、市民レベルでは友好を持続・発展させる交流が可能となる。民際交流は理念的な立場である。民際交流について、注視すべきことは交流の中身を、住民の生活・独自の文化や歴史の再発見・アイデンティティの再構築・地場産業の進行など生活者の観点に近いところに据えていること、及びそれぞれの地域の独自性、文化的特性、歴史的経験、あるいはグローバルな人間的価値を認め合うという「人間と人間」の共存・共生を目的にしていることである。これらの点から、民際交流は「異質なものの存在を認め、相互に異文化を理解する」ことを推進するものであり、非権力的な交流を目的にし平和を希求する運動の方向を持っていることが理解できる。ユネスコ憲章はいう。「相互の風習と生活を知らないことは、人類の歴史を通じて世界の諸人民の間に疑惑と不信を起こした共通の原因であり、この疑惑と不信のために、諸人民の不一致があまりにもしばしば戦争となった。・・・(略)・・・政府の政治的及び経済的取決めのみに基づく平和は、世界諸人民の一致した、しかも永続する誠実な支持を確保できる平和ではない。よって、平和は失われないためには、人類の知的及び精神的連帯の上に築かなければならない。」ここでいう「風習と生活」を「文化」と解すれば、異文化間の理解こそが「永続する平和」を実現する力となり得る。かくして、「民際交流」は平和を生み出す一つの原動力であるといえる。ユネスコ憲章がいう「永続する誠実な支持を確保できる平和」の創造のために、国連には国際社会における「民際交流」が拡大・発展を遂げるための条件整備を積極的に行うことが求められている。28