ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

しかなかった。しかし、冷戦が終わり、安保理における協調体制が取れやすくなった。それと同時に地域紛争も急増した。それに対応して、PKOは急速に増えた。80年代末から94年9月現在までの7年間に21件のPKOも行った。その中で現在活動中のものは実に12件もある。年代別にみれば近年のPKOの急増ぶりは一層はっきりする。40年代2件、50年代2件、60年代6件、70年代3件、80年代5件、90年代の4年間だけで16件となっている。しかも、近年のPKOの多くは従来のPKO三原則を外れたものである。同意原則、非強制原則、中立原則から徐々に離れて、果ては武力行使を前提としたいわゆる平和執行部隊を主力とする行動に至った。93年3月から始まった第2次国連ソマリア活動がそれである。他に、ルワンダ、旧ユーゴスラビアなどにおけるPKOも従来のPKOとは異質なものである。しかし、これらの武力傾斜の変質したPKOは膨大な金がかかったにも関わらず、失敗に終わるのが実態である。ソマリアにはアメリカ軍を主力とする28000人の部隊を派遣し、10億ドルを注ぎ込んだが、結局は成功しなかった。それはお金のムダ使いだけではなく、国連の威信をひどく傷つけ、恨みを買うこととなった。国連の平和執行部隊として派遣されていたアメリカ兵は射殺され、遺体が普通のソマリア市民に吊り回されていたことがその象徴とも言える。いま、旧ユーゴスラビアでNATO軍を中心とした武力行使がエスカレートしており、セルビア人勢力との泥戦に陥る可能性さえある。いままで既に6億ドルをその活動に使ったが、紛争が鎮静化する気配はまったく見せていない。今日の地域紛争の多くは国益衝突、宗教対立、民族怨念からのものであり、冷戦時代にイデオロギー対立に隠されていたが、冷戦終結と共に一気に表面化したものである。紛争当事者にとって、紛争そのものは国家、民族の存亡をかけた戦いである。国連はそういう紛争に武力を持って直接介入するのは初めから失敗に決まっている。紛争の事前、事中、事後にもかかわらず、国連がなすべき事は調停であり、紛争当時国をゼロサムゲームから280