ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

これは1988年にスコットランドのロカビーで起きたパンナム機の爆発事故がリビア人テロリストによるものだとして容疑者の引き渡しを安保理決議を伴って求めた米・英に対し、航空機内における犯罪の容疑者の取扱いについて定めた、Montreal Convention中の規定の解釈をめぐってリビア側が提訴したものである。リビアが求めたのは、モントリオール条約では外国に引き渡すか自国で起訴するかの選択が許されていることの確認と、アメリカによる経済制裁(これも安保理決議に基づく)の中止であったが、裁判所は条約が定めた裁判付託前の6ヵ月の前置期間をリビアが満たしていなかったとしてリビアの主張する権利は保護に値しないと判断した。しかし、これと同時に小田裁判長をはじめとする複数の裁判官が判決の結論には不必要な意見を残しているのである。小田:国家が主権の侵害を主張した場合、裁判所は安保理決議についても検討する可能性がある。[concurring opinion]Lachs:拘束力を持つ決定を下すことのできる二つの組織が協力すべきである。(安保理は判決を待たずにさらなる制裁を求める決議を行っていたが、判決主文ではこの当否についてふれられていない。)[concurring opinion]Ni:管轄権があればICJは問題が安保理で係争中であっても判断を恐れるべきではない。Shahabuddeen:裁判所は安保理を制限する力になるべきだ。[concurring opinion]Weeramantry:憲章の解釈に関して司法的権限を持つのはICJだけだから第一の発言力を持つ。[dissenting opinion](他にEvensen, Tarassov, Guillaume, Aguilar, Mawdsleyが、多数派が安保理決議の有効性を103条を持ち出すことで一応認めたと解されるのに対して、有効性自体に触れる必要はないと付け加えている。)安保理決議が無効だとまで言ったのはリビアが指名したad hoc裁判官だけであり(憲章1条2項、2条7項、55条を引いて。El-Kosheri [dissenting opinion]、結局11対5でリビアの要求を退ける判決に決まったが、必要なときはしかるべき判断をする用意が裁判272