ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第11回佳作では明文上民主的な理想やモラルが盛り込まれているからである。第3節大国(特にアメリカ)はlegitimacyを掲げ得ないしかし現実の国連の政策決定プロセスは、民主的とは言い難い。冷戦後、拒否権行使の可能性が大幅に減少したことで安保理の決議はすんなり可決されるようになった。このことは当時多くの学者の反応に見て取れるように期待感をもって受け入れられた。政治学者のみならず国際法学者にもほとんど手放しの賞賛が多く見受けられた。しかし、拒否権行使がなくなったことで、安保理で示される案は総会での議論を経ることなく、国連の名を掲げることになったのであり、そのプロセスは民主的であるには程遠い。確かに湾岸戦争などでは実際に大多数の国がイラクを非難する側にいたから、結果的には国際社会の意向を反映していたかもしれない。しかし、それは手続きの欠陥に対する言い訳にはなりえない。国連をかさにきて強制的行動をとろうとする安保理は、そうした行動の前提としてlegitimateなルールのシステムの存在を認め、それにのっかっているかに見せてその実、ルールが地に足ついたものとしてあるための仕組みを拒んできたのである。政策決定のプロセスからはじき出されつつも決議の履行だけは強制される加盟国の不満は大きい。第48回国連総会ではそうした不満が随所に見られた9。第4節アメリカの態度アメリカが国連を自国のself-interestの実現に資する限りにおいて利用価値のあるもの、というくらいの評価しか与えてこなかったのは明らかである。60年代以降第三勢力の発言権が増し、特に70年代に入ると彼らの代弁者的な事務総長ウ・タントが安保理の行動を非難するなどしたため、アメリカはユネスコを脱退(1984年)し、国連そのものからも引き上げる意思をちらつかせた。また、アメリカは設立直後からソ連の拒否権濫用が国連機能を麻痺させているといってきたが、この主張自体(現実隠蔽の効果を持っていたのみで)容れられないものであることは上に述べたことより明らかである。この点冷戦後の国連を中心とした新しい国際秩序を無邪気に期待した多くの学者10、ジャーナリズムは気付いていなかったのである。9世界年鑑1994、54頁。10 See e.g., Oscar Schachter,“United Nations Law In The Gulf Conflict”, 85 A.J.I.L.(1991).267