ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第1節Belgian Amendment国連憲章という名の多国間条約は組織に関する規定という重要な部分においてアメリカ合衆国憲法に似ていると法学者Thomas M. Franckは言う1。政治的権限を二つの組織、総会と安保理に与え、司法機関を設けたが、政治的機関については前者に実質的決定権を与え、司法機関の権限については巧妙にこれを制限した。国連憲章92条〔裁判所の地位〕には以下の文言がある。“The International Court of Justice shall be the principal organ of the UN.”(underline added by author)注意すべきは、この文言の意味するところが、裁判所にjudicial reviewの権限はなく、単なるprincipalなorganにすぎないということである。憲章の採択に先立って、ベルギーが二度にわたって原案の修正を主張している2。最初の修正案は1945年2月5日に、連合国による1944年秋のダンバートン・オークス会議での提案についてなされた。それは、安保理が紛争に介入するいかなる場合においても、その行動が「最終的」なものとなるのは、それが独立と重要な権利を尊重しているかどうかについて、当事者がICJに勧告的意見を求める機会を持った後である、とすべきであるというものだった。これは1945年5月19日にも、安保理について検討する委員会の付属組織であった平和的紛争解決委員会でも主張された。しかしこれはコロンビアなどわずかの国を除き、ほとんどの国の指示を得られず、べルギーは提案を取り下げた。このことは、たとえ安保理の行動が明らかにultra viresであっても裁判所は常にそれを支持するということが期待されていたことを示す。大国の主張は、米:SCは正義と国際法を十分考慮し、機構の目的に沿った行動をとるよう憲章草案に盛り込まれている。ソ連:安保理は加盟国の信頼を得るはずのものであり加盟国の主権を危うくするようなことを望むわけがない。といった具合であった。2641 Thomas M. Franck,“Editorial Comment: The Powers of Appreciation”, 86 A.J.I.L. 1.(1992), p. 519.2 Geoffrey R. Watson,“Constitutionalism, Judicial Review, and the World Court”, 34 Harvard International Law Review(1993), p. 8.