ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

なって総会の権限が強化され、五大国の当初の意図は若干は弱められた。しかし、安保理と総会の権限を区分すること、安保理が実質的な集団的安全措置を決定する条件として五大国の全員一致を必要とすること、すなわち、五大国は拒否権を行使することができるという原則については、五大国は頑として譲らなかった。国連創立時に決定したこの安保理の権威・権限・票決方法は、その後も継続して維持され、非常任理事国6ヶ国を1965年になって10ヶ国とした以外には全く修正されず、旧敵国条項さえも存続している。上記の国連創立時の事実をふりかえると、国連が当時から国際社会の真の公正・正義・秩序を確立している国際機構であったかどうか、という根本的疑問を抱かざるを得ない。(2)国連と国家は相剋している世界の各国は主権を持ち、それを互いに行使して国際社会を形成している。これに対して、国連憲章に明記されているように、国連は国家主権を尊重する原則を掲げている。従って、国連は各国の主権を支配する超国家的権力を持っていない。しかし、国連憲章の第一・第二条では、国連では集団的安全保障体制を確立し、加盟国は国連に統一された体制のもとで集団的安全保障の責任を担うこととなっている。この二つの事実は互いに相剋している。すなわち、特定の加盟国が、国連において、具体的な案件に対して主権に基づいて否認すれば、集団的安全保障体制を維持することはできない。中でも、五大国の拒否権は五大国の主権を鮮やかに象徴している。従って、国連は、加盟各国の主権に基づく主張や行動が国連で加盟各国によって討議または評価される過程の中から、公平と正義に基づく秩序正しい国際世論が形成され、それによって特定の加盟国が主権を譲歩することを期待する場にしか過ぎない。すなわち、加盟各国が国連において主権をある程度犠牲にして、世界の公正と正義に関する人類としての英知に基づいて行動しない限り、国連は成立し得ない。(3)国連は直接的手段を求め過ぎた国連憲章の第一条には「集団的安全措置」を行使すること、第二条には武力または威嚇248