ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

衆(特に若年指導者層)が真に安定的な発展を求めるまでに、まだ10年以上の時間を要すると言わざるを得ない。さらに真の意味での「市場民主主義」の洗礼を受けていないアジア(中近東を含む)・アフリカ・ラテンアメリカ諸国では、規模の差こそあれ、政治的混乱が起きかねない火種を抱えたままである。しかし、これらが同時的・連帯的な大規模紛争に発展する可能性は、極めて低い。すると25年後(あるいは今日からの将来)の世界に求められる国際機関の果たすべき役割は、世界を二分するが如き対極構造を前提とした地球規模の意思決定あるいは組織力の行使ではなく、ミクロレベルの「紛争」を機動的かつ協業的に解決あるいは予防する機能である。さらに紛争の当事者は、「国家」であるとは限らない。私企業や犯罪組織、思想的なテロリストなど、環境や社会の安全に危害を加える存在の多様化・小規模化は、政府間協議による包括的な課題解決を困難にしている。また途上国の都市部への急速な人口流入は、先進国型と言われる都市型犯罪、つまり麻薬・重犯罪などの組織的犯罪を誘発する。つまり安全保障の枠組みも、ミクロレベルの紛争を停止する調整機能と、これらを未然に回避する抑止機能、さらに包括的な抑止力としての刑事司法機能とが、同時に拡充されなければならないのである。その頃、世界の国際貿易総量は国内貿易総量を間違いなく超えている。拡大EU、拡大NAFTA(「汎米自由貿易機構(PAFTA)」なるものが生まれている可能性が大きい)、APECなどの地域内自由貿易同盟が本格的に域内無関税体制を確立すると同時に、資本や人材の流動化、さらにはドミノ的な域内分業体制の進展が進むことになるだろう。WTOなどの世界的通商機構を通じた商品や製造過程の規格化も進められることになる。また、自由市場経済を基調とする以上、援助の成果としても相当の市場競争力を得られるよう実施されるべきであることからも、民間の投資交流がさらに増大する必要性も高い。交易量の増大は、私的紛争の増大をも意味する。これらを予防するとともに調停するための、国際私法体系や民事司法機能との整備が必要になる。つまり、決して遠い将来でない25年後の地球において果たすべき役割から考えれば、238