ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

ページ
24/912

このページは 佐藤栄作論文集9~16 の電子ブックに掲載されている24ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

佐藤栄作論文集9~16

CSCEは、NATO(北大西洋条約機構)のような地域的軍事同盟体制ではない。しかし、「冷戦の終焉」によって生じた東欧の変化、「ドイツの統一」、また「ソ連の解体」などに直面して、ヨーロッパは、「冷戦の構造」に代わる新しい国際秩序を大きく必要としている。そのために、国々の信頼醸成を外交面で図るCSCEは、92年末に「域内市場統合」の完成を目指すECとともに、ヨーロッパでは、新しい秩序づくりの受け皿になりつつある。アジアでは、残念ながら、こうした新しい秩序の受け皿が用意されていない。第3章ポスト冷戦期の国連像-あるべき国連の姿1.はじめに国連に先立つ国際連合の場合には、そもそも地球的諸問題の存在も希薄で、基本的に主権国家間の利益調整とそれに応じた国際協力という、国際機構の伝統的任務に従事していれば事足りた。しかし、現在、地球的諸問題への取り組みはもはや主権国家間の利益調整にとどまるものではないことは、前章の1で述べた通りである。国連があくまで国家中心的あるいは政府間的機構にとどまり続けることを前提とするならば、いわば国家主権の均衡のみに配慮しえた民主主義論にすぎないことになる。だが、国連に流入する諸問題が国境を越えた性格を強めている現在、そうした枠組みもいずれ状況に適合しないものになっていく可能性がある。むしろ国連の体現する民主主義を、国境を越える諸問題から不利益を被る者あるいはそれらの解決の受益者たちに、国連がいかに奉仕しうるか、という観点から再構築する必要があるように思われる。民衆が新しい時代の真の「主権者」なのだという観点に立つなら、国連の民主主義も、それに符合するものになると考えられるからである。長い道程だが、国連の真の活性化のためには、それが避け難い方向性ではないかと思われる。国際機構は元来、国家間の協議や交渉の場を提供するだけでなく、加盟国の協力の枠組みとして、あるいは外交政策の道具として進化発展してきた。しかし、世界史的変容を迎えた新時代においては、国連はその加盟国の国益追求を越えた人類全体の利益を追求する22