ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第11回優秀賞取り組みは、もはや(経済社会理事会の下部組織で処理するが如き)アドホックな対処では済まされない。また、後行途上国あるいは最貧国・被災国に対する(人道的・経済的)援助も、今日では恒常化しつつあるとともに、国際機関の基幹的機能として位置付けられている。特に人道的援助活動においては、これまでの国家間紛争による被災民保護が主たる目的であった難民援助活動も、内戦による民族的・宗教的対立の被害者である「国内難民」の救済さえ迫られている。また特に急速な人口増加が予想される地域では、次第に顕在化・固定化する生活格差(対内・対外)が、新たな紛争の引き金ともなりかねない。さらに問題解決を困難にするのは、世銀や各国の政府開発援助(ODA)計画などが進めた基盤整備事業が必ずしも効率的な成果を挙げておらず、むしろ環境の破壊や対象地域住民に対する人権侵害の原因となる例さえ見られるといった、援助事業の複雑さである。援助を必要とする人々を生む構造そのものが抜本的に改善される見通しがなく、むしろ大戦後の独立運動や冷戦構造といった画一的パラダイムが失われた今日から想像される25年後の姿は、さらに深刻化したものに他ならない。国家主権と人道・基本的人権との調和という「国家」と人間の関係そのものを問う本質的かつ極めて困難な課題、経済的発展の実現と環境問題へのバランスという先進国国内ですら解決し得ていない課題、さらに長期的視点に立った効果的・効率的運用が求められるとともに援助を要する事態の背景にある構造(対立・不平等)の解決という根元的課題に、直面する国際機関による援助は、やはりアドホックな対処が許される状況にはない。国連を生んだ集団安全保障体制も、このような背景から捉え直す必要がある。世界レベルでのイデオロギー的対立構造が事実上消滅している以上、これからの安全保障の「敵」の一つは、「国家」という理念上の枠組みではなく「民族」や「宗教」といったミクロレベル固有の歴史的背景をもとに勃発する「紛争」である。自由市場経済の恩恵を受けて安定的発展を遂げてきた諸国家とは対照的に、大戦後の重しから解放(あるいは孤立によって築かれた内部システムが外部社会との接点によって触発)されて間もない諸国では、民237