ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

現在の経済モデル・理論には、環境という要因が欠如しているために、環境破壊と経済・生活との関係を客観的に評価しうる制度が存在していない。そのために、多くの政策担当者や政治家、企業経営者は、環境破壊が経済や人類の生存に与える悪影響について懐疑的となり、かれらを説得することが困難になっているのである。国連大学は「世界公共政策センター」として、環境というファクターを取り入れた経済的意思決定システムを創り、様々な外交ルートや国際学会、国際会議等を通じて、それを世界の国、企業、そして個人という環境に影響を与える行動主体に広めていく努力をしなければならない。具体的には、世界で一般に使用されている国民経済勘定における総合的経済実績の計算方法を変える必要がある。来年設立されることになっている「国連大学高等研究所(UNU/IAS)」等で、市場経済が地球環境に与える影響を正当に評価できる方法を確立して、さらに、現代の国家や企業の行動が将来の世代にもたらす影響も定量化しなければならない32。例えば、このような試みのひとつの代表例を一つ紹介してみよう。二酸化炭素濃度の上昇に伴う地球温暖化が、世界全体の経済成長に、どのような影響や制約をもたらすかについて、茅陽一東京大学教授らは、次のような単純明快な式を提示している33。CO 2CO 2 energy=――――・――――・GNPenergy GNP上の式を、適当に変形し整理すると次のような関係が導かれる。可能なGNPの成長率=CO 2出量の増加率+燃料中の炭素集約度の改善率+エネルギー利用効率の改善このように、環境と経済の関係を客観的データを使って実証的に研究することが可能なのである。現在でも国連大学は、そのような実証研究のプロジェクトを行なっているが、22632中には、定量化や計量分析というものを疑問視・敵対視する流れがあるが、定性分析では得ることの出来ない「客観性」「予測性」を分析に付与するためにも、また、意思決定の際における不確実性を減らすという情報の基本的役割を考えても、モデルに基づく計量分析は不可欠である。33 Y. Kaya, K. Yamaji and R. Matsuhashi,“A Grand Strategy for Global Warming”,(presented at Tokyo Conferenceon the Global Environment and Human Response toward Sustainable Development, 1989).