ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

ている第三番目は、国際レジーム27の不備、国際社会の組織化が未発達の段階にあり、国際的な取り決めや約束事を執行させることが保証されにくいという事実である。つまり、国際社会は、国内社会と異なり、統一的な立法機関が存在せず、裁判所の強制的管轄権が欠如しているために、国際社会で「合意」を得ることと、南北間の利害を調整することが極めて困難になっている、という事実である。現段階でも、地球的問題群を担当する国際的機関は存在するが、充分に機能しているとは到底言えない状況である。その原因を分析すれば、「政治的パワー」「資金能力」そして「法的強制力」が欠如していることが挙げられよう。地球的問題解決に向けて、国際的な制度・機構を再形成する場合、前述の三つの力を具備するものである必要がある28。地球的問題に対する各行動主体の取り組みも、何らかの強制力による拘束を受けて、実質的に担保されるからである。現在でも数種の国際的な監査機構が存在するが29、私はその監査・モニタリング機構と国連大学との情報面における連係を提案する。ただ、監査機構はその独立性と中立性こそが命であるから、人事面において連係してはならない。具体的には、まず、国連大学は、諸国の実情や政策の実効性に関するモニタリング・検証の役割を担うのである。前述のように、現在でも数々の監査・モニタリング機関は存在するが、決して実りある成果は上げていないのが現状である。「グローバル・ガバナンス」を実効化たらしめるためには、現存する監査・モニタリング機構を強化させると同時に、国際司法裁判所(ICJ)との連携を密にして、準司法的機能をも果たすようにせねばならない。一般的に、司法的作用は、(1)事実調査レベルと、(2)裁判基準(多くの場合、法規範である)を具体的に適用する、という二つの段階に分かれる。特に、最近は、国内・国際を問わず、(1)のレベルにおける重要性が増しており、裁判所以外の外部の行政機関が、(1)のレベルで事実調査の役割を担うという意味において、部分的にではあれ、司法作用に関与するという現象が増加している30。もし国際的な監査・モニタリング機能を強化し、各22427ここで、「レジーム」とは「参加諸国が共通の問題解決アプローチに導くと期待する規範・原則・規則・手続きの集合」を言う。参考文献[Stephen D. Krasner, ed.,“International Regimes, Ithaca”, Cornell University Press, 1983]から筆者が訳して引用。28このあたりの議論は、Jim MacNeil, Peter Winsemius, Taizo Yakushiji,“Beyond Interdependence The Meshing ofthe World Economy and the Earth’s Ecology”, Oxford University Press, 1991が大変に参考になる。29国連等の国際官僚組織が公正かつ効率的に機能しているかを監視する現行の国連内部の機構としては、行財政管理局、監査・調査部、外部会計監査、合同監査団(JIU)などがある。