ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第11回最優秀賞Managing Information)」としての役割を演じることを主張したい。「グローバル・ガバナンス」による「共通安全保障」実現の制約要因となっている第一番目は、各意思決定者達が地球的問題群に関する情報にアクセスすることが困難になっているという現状である。これは、前章で指摘した「グローバル・ガバナンス」の三つのレベル21のうち、「学者、オピニオン・リーダーの考え方」「人間行動パターン」という第一・第二のレベルに関わる問題である。「グローバル・ガバナンス」を形式的に担当するのは、それぞれの国家であり、国際機関や多国籍企業、非政府組織であるが、それらの行動主体の意思決定を実質的に司っているのは、政策担当者であり、企業役員であり、政治家であり、それらのアドバイザー役を務める学者・専門家・コンサルタントであり、また政治家を選ぶ国民なのである。従って、それら「グローバル・ガバナンス」の「実質的」担い手が、「グローバル・ガバナンス」とその目的理念である「共通安全保障」という概念を認識・理解し、環境破壊・国際テロ・人口爆発・資源枯渇といった地球的問題群を「非軍事的脅威」として表象・認容しうるかに、「グローバル・ガバナンス」による「共通安全保障」が「絵に描いた餅」となってしまうか否かがかかっていると言えよう。実際はどうであろうか。軍事費用の増減や軍事施設等に関する議論や発言は活発であるが、環境破壊や環境モニタリング等に関する議論はまれであることから推察すれば、冷戦が終結した現在においても、多くの国の意思決定者達は、国家の安全に対する脅威は、他国の軍事力であると考えており、地球環境の破壊を始めとする地球的問題群は依然として、「脅威」とは捉えられていないようである22。私は、「グローバル・ガバナンス」による「共通安全保障」に対する認識を各個人に深めさせるための方策として、次のことが重要であると思う。つまり、地球的問題群と経済と人間の生存との関係に関する客観的評価システムを整備し、そのような評価センターをネットワークで繋げる仕事を国連大学が担当するのである。客観的なデータや資料がなければ、地球的問題群の急迫性・深刻性を感じることは困難であろうし、実際の政治的意思21(1)学者・オピニオンリーダー・マスコミなどの考え方、(2)意思決定者を含む日常的な人間行動のパターン、(3)外交交渉、国際会議等を通じたレジームの形成・変革という三つのレベル。22これは、政策担当者に限った話ではない。国民レベルでも、地球的問題群という事実の存在は認めていても、実感として、その急迫性、現実性は捉えられていないようである。1994年夏に私が参加したワシントンDCでの「日米学生サミット」における議論の中でも、同趣旨の意見が、日米両国の学生から出された。221