ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

国家に対する軍事的脅威を最小限に食い止めることこそが「安全」の維持・確保であったのであり、各国の主権の具体的担い手である中央政府が様々な管轄権を行使することにより、当該国家に対する軍事的脅威を防いできたのである。さらに、国際社会における交渉・会議において当事者能力が与えられたのは、基本的には各国の政府代表であり、それ以外のアクターは発言する場が確保されることは少なかった13。つまり、「国家安全保障」実現を目的とする場合には、各国の政府のみが統治の主体であり、まさに「政府による統治」が全てであったのである。それは英語を見ると良く分かる。Governance(統治)は、Government(政府)によってなされるものであったのである。では現在はどうだろうか。「政府による統治」で様々なグローバルな問題を抱えた地球社会における「共通安全保障」を実現していくことは可能であろうか。答えは否である。現在地球社会が抱えている種々の地球的問題群には、「政府による統治」だけでは対応していくことは出来ないのである。なぜなら、地球的問題群そのものが各国の「国家管轄権」を超えた、国境を超えた問題であるからである。国境を超えた、各国の管轄権の行使では処理することのできない「地球的問題群」に対応していくには、国境を超えて、流動的に活動することのできるアクターがその任務を引き受けなければならない。国家は、その定義により、国境を超えて活動することなど出来ないから、国家以外のアクターこそが、これまで国家に独占されてきた「統治(Governance)」を、限定的・機能的に引き受けていく必要があるのである。まさに、「政府による統治」だけでなく、「政府によらない統治(Governance without government)14」をも観念し、これら二つの統治形態を不可分に観念したものを「グローバル・ガバナンス(Global governance)」と私は定義する。そして、これこそが、「共通安全保障」実現に不可欠な「統治」形態であると私は考えるのである。「グローバル・ガバナンス」は、一種の世界秩序の形成・変革のマネージメントの方法と捉えられることも可能であり、これには、次の三つのレベルがあり、これらが同時に進行しているのである。第一のレベルは、学者・オピニオンリーダー・マスコミなどの考え21813国際労働機関(ILO)の総会において、労働者の代表が政府代表と共に投票権が与えられていた、という事実は数少ない例外と言える。14最近、9人のアメリカの政治学者の論文を寄せ集めて編集された「Governance without government: order andchange in world politics」という名の本が、Cambridge University Pressから出版された。興味深い事実である。