ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第11回最優秀賞「創設20周年を迎える国連大学に世界が期待する役割「グローバル・ガバナンス」による「共通安全保障」の実現に向けて1はじめにもうすぐ国連大学は創立20周年を迎えようとしている。この20年間に世界は大きく変動してきた。1975年時点で40億8千万人であった世界の人口は、1990年現在では52億9千2百万となっている。1974年時点で8350億ドルであった世界貿易量は、1990年時点ではなんと3兆4000億ドルに達している1。そして、何と言っても、1989年11月9日のベルリンの壁の崩壊、翌12月のマルタでの米ソ首脳会談に象徴されるように、冷戦が終結してしまったことは最も大きな変化と言えるだろう。アメリカの地位も十分変化したように感じられる。私が幼少だった頃は、アメリカと言えば、雲の上にある「夢の国」「理想の国」と言うイメージがあり、一生のうち何度か行ければいいな、と思っていたと記憶している。子供心ながら、世界の警察官、覇権国家としてアメリカを描いていたのだろう。しかし、現在はどうだろうか。今述べたようなアメリカ像を描いている人は少ないのではないだろうか。私は、まずこの20年間に世界で起きたことをマクロ的視野で振り返ることから、考察を始めたいと思っている。我々が今目撃している背後で起こっている世界の地殻変動という大きな枠組の中で、国連大学の役割を論及することが本稿の目的である2。まず、始めにこれからの世界運営していくにあたっての指導理念を二つかかげ、この二つの指導理念に基づいて国連大学の役割を提言することとする。そして、決して理念のレベルで終始するのではなく、その理念に基づいた政策提言、戦略立案という観点も見失わないように心がけた。俵典和考えてみれば、国連大学誕生と私自身の誕生は時期的にほぼ符合しており、この20年1 J. N. Rosenau, E. Czempiel,“Governance without Government: order and change in world politics”, CambridgeUniversity Press, 1992;猪口孝「現代日本外交」筑摩書房、1993年、横田洋三編著「国際機構論」国際書院、1992年。2巨視的な視点から国連大学の役割を論じる、という目的を設定したため、本稿の議論全体(特に前半)が多少抽象的、理念的になりすぎたきらいがあるが、本稿後半でその部分は補ったつもりである。213