ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

戦闘が始まってからの国連と国際社会の姿勢は「受動態」という批判を招いても仕方がないものだった。イスラム教徒、セルビア人、クロアチア人が40、37、21の割合で住んでいるボスニア・ヘルツェゴビナ共和国にも戦火が広がると予想はついていたが、内戦の拡大防止の面で国際社会は無策同然であった。西側先進国がクロアチア、スロベニア両国の少数民族(セルビア人)問題を据え置きして早急な承認に踏み切ったため、穏やかで平和的なユーゴ分割の道は閉ざされ、同時にセルビアを反発させて国粋主義者、強硬主義者が台頭した。飢餓、難民対策も資金不足や安全面の問題があって十分ではなかったし、停戦を各勢力に強制するほどの軍事力を展開せずセルビア人勢力のなすがままにまかせてしまった。場当たり的、かつ実行の伴わない議論や決議が現地での国連不信と犠牲者の増加の一因であるのは間違いない。国連軍の兵士達の士気の低下や不正まで伝えられている。それでも国連とECの努力は和平の糸口を見いだした。先日のボスニア和平交渉ではイスラム教徒側がセルビア人の武力による土地の獲得を認めることになるとしてバンス・オーエン案を拒否したが、厭戦感が広まり、先進国の軍事介入の可能性がほぼ消えたため最終的には受け入れられるであろう。だが、私はバンス・オーエン案による紛争の根本的な解決は難しく、数年で新しいプランが必要になると思う。その最大の理由としてボスニアが「民族別共和国」という極めてあやふやな地位にあることだ。国中が敵対する自治区である国が平和裡に発展していくとは思い難い。飛び地間の連絡はこれからの摩擦の原因になるだろうし、クロアチア人にセルビア人は「本国」への帰属を求めている。国家間、民族間の共存共栄は国連の最終目標であるけれども、ボスニアでは家族や恋人を殺した他民族に対する憎しみは民族混住を不可能にしており、結局三分割は避けられないであろう。[B]カンボジア冷戦の犠牲者となったアジア諸国の中で、カンボジアはベトナム以上に被害が大きかったと思われる。皇族出身のノロドム・シアヌークを元首とするカンボジア王国はベトナム戦争当時中立政策を取っていたが、アメリカが南ベトナムの後方安定化のために介入を行い、それに伴い70年ロン・ノル首相が反シアヌーク・クーデターを起こして親米的なクメー192