ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第10回奨励賞る可能性が高い。国際社会による紛争への介入は各国の権益に見合った重要な課題になりつつある。私の小論はまず現在の主な地域紛争とそこでのPKOを研究し、国連の国際社会における位置づけとPKO時の他の機関や国のかかわりあいについて論じる。次にそれらの前例を踏まえた上で今後のあるべきPKOの形態を探る。最後にこれから国際社会において重要な役割を演ずると見られる日本がPKOにどのような形で賛助していくか考察してみたい。Ⅰ.現行のPKOの評価[A]旧ユ-ゴスラビア諸国旧ユ-ゴスラビアは東西文化の接触点に存在し、主な土着の民族は全てスラブ系なのだが千年以上昔から宗教間、民族間の衝突が絶えない地域だった。第一次世界大戦後、侵略者への対抗意識が大スラブ主義を台頭させて君主制ユ-ゴスラビアが誕生したけれども、もともと言葉も宗教も違うだけに民族間の争いはやむことがなく、第二次世界大戦時にはナチスに支援されたクロアチア人の傀儡国家がセルビア人に対し民族純化と大量虐殺を行った。戦後共産主義者のチトーが民族のバランスをとり、教育によって「ユーゴスラビア人」という新しい国民意識を造り上げて奇跡的にユーゴスラビアを再生させたが、天才的な政治家だった彼にも民族感情の根は断てなかったのである。彼の死後、それぞれの共和国では多数派民族がイニシアチブを握って大衆迎合政治が横行し、少数民族は軍や警察から追い出されたり、自治権を奪われるなどと冷遇された。連邦の組織にはセルビア人が多かったため、連邦軍及び政府は自然にセルビアのものになった。やがて身の危険を感じた少数民族と他共和国の自国民族居住区を含む単一民族国家を作ろうとする各共和国政権の利害は完全に一致した。内戦はクロアチアのセルビア人がセルビアへの帰属を求め、それにセルビアが援助を与えるという形で勃発したが、どこで何時起こっても不思議はなかった。すでに民族間の好感情は過去の存在であり、他民族への迫害は市民が自主的に行い、政府が暗黙の了解を出すという形で進められたのである。191