ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第10回佳作なれば、現在の日本では、暮らしの中のあちこちで、人権意識の薄さを感じることが多々あるからだ。しばしば、老人や障害者、弱者への“いたわりの心”などというのを耳にするが、私には、いたわるという発想はそのまま傷をつけずにどこかへ入れておこうという意味合いがあるように思えてならない。弱い部分をそのまま認めて一緒にやっていこうという気持ちが感じとれない。同情はしても、人権を持った一個人として対するという意識を持たないから、単に、福祉に力をといった漠然とした物言いだけが一人歩きする。それを受けて、公共体では、施設を作って生活の補助金を出すという形だけになる。私自身、重度の傷害児と共に暮らしてきて周囲の理解不足を痛切に感じてきた。気の毒にという同情は多くの人が抱いてくださるが、弱者は同情してほしいのではない。対等に接してほしいだけなのだ。それぞれの個性をそれぞれの個性として受け止めてほしいだけなのだ。このギャップをどうすれば埋められるのか考えてきた結果、私の辿りついたのが、人権意識を日本人一人一人に植えつけたいということだった。では、どうやって、人権という概念を植えつけていくのか。一つは子どもに対する学校教育からと考える。現在、小学校の社会科教育をみると、生活科から入り、自分の住む町を知り、県を知り、日本を知るという方向で行われる。いずれも、その地域での標準的な暮らしの仕組みが語られ、地形や産業などの知識を与えられる。ノルウェーの教科書では、低学年のうちから世界にいろいろな民族がいること、違いは個性であることを語りかけ、学年が上がるにつれて、対等な立場に立った上での援助の必要など現実の世界を語っている。また、命の尊さについても低学年のうちからとりあげられている。このことを比較した時、日本の教育に物足りなさを感じないではいられない。仕組みを教えることは勿論必要だが、それだけが教育ではない。必要なことと、大事なこととは、181