ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第10回佳作を緊急に対策が必要な6大病に指定し、そのコントロール法、新薬やワクチン開発等の様々な研究に力を注いでいる。世界中でこれらの病気が未だに猛威を振るっており、多くの犠牲者を出している。しかし、これらの伝染病は風土病的な色合いを持ち、既に長年に渡って人間と共存してきた。この様な疫病については、先進諸国において常に最新の研究が成されてきており、そこには膨大な量の技術の蓄積がある。それはもちろん現在進行形であり、こういった病気のコントロールに関して、WHOとしては各地のその様な研究機関に依存した方が得策ではないだろうか。むしろ国連がより充実させるべき課題は、緊急医療対策である。紛争、災害の際に、いかに素早く、いかに効果的に医療を施すか。また何か病気の流行が発生した折に、いかにしてその蔓延を防ぐか、そのノウハウを国連が蓄積していくべきである。例えばここ数年の爆発的なAIDSの流行への対応を見ても、今ひとつ国連は後手にまわっている印象を受けた。また残念なことに、現在各地で頻発している戦争や天災の被害者や、それによって発生した難民の緊急医療援助で活躍しているのは非政府間組織(NGO)であり、各国政府からの緊急医療チームであったりする。世界平和のために設立された国連であるのにどうしていつもその対応が遅れるのだろうか。病気の流行が起こった時もしかりである。国連ならば複数の国にまたがった援助ができるはずであり、十分にその力が発揮できれば、難民救済や病気の蔓延阻止に多大な効果を期待できる。また複数の国やNGOが勝手な援助を行なうよりは、国連からのひとつのチームとして活動した方がより効果的な援助ができることは明らかだ。マラリア等の伝染病のコントロールをおろそかにしろということではないが(実際にWHOは天然痘の撲滅に成功したという実績を持つ)、現に目の前で痛みを負っている人々への救済により力を注いでもらいたい。そのためには、緊急医療に精通した人材や医薬品の確保が必然であり、輸送手段を含む派遣のための体制作りが求められる。また、各国政府から緊急事態の際の医療援助の同意書を取り付けておくことも必要だ。常に世界各地へ医療チームを派遣できる様な体制を整えるのは、文字で書く程に簡単な事ではないが、世界規模の援助チーム体制作りができる169