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概要

satoh

第8回優秀賞構造とLてとらえる.また、神経症や精神障害などいわゆる心の病は、感情が他の機能に影響を与えて主体的に行動することを妨げたり、判断を混乱させたりすることから生じる、つまり自己の機能不全である、と考える。先に述べたように、我々がアイデンティティの危機に陥った場合、そこから脱することは容易ではなく、他者の援助を借りねばならないことが多い。これも我々が問題に合理的に対処することを、我々自身の感情が阻むからである。感情を扱うことが困難であることは、報復が連鎖のように繰り返されることからも理解される。アイデンティティの危機に掘する時に渦巻く感情は、絶望、怒り、悲しみ、無力感などが入り交じり、近づくものを一歩も寄せつけない、あるいは怒涛のように他者を巻き込むような強烈なものである。このような状況に対Lてどのような介入が可能かというところで発展してきたのが臨床心理学の方法論である。現実には数多くの技法が創案され、実施されているが、成果を上げたものの多くに共通して言えるのは、どの技法も治療者が被治療者の感情体験を共有し、それを本人が主体的に取り扱えるようになるまで吟味し続けることを手助けする、ということである。ここで我々が用いる方法は「体験」と「観察」である。体験は、主に治療者が被治療者の理解のための追体験として行う。また観察は、主として被治療者が自らの感情を吟味するために自分の内面について行う。学派によって表現用語に違いがあるが、これが臨床心理学の方法論の基礎であり、これを実現するために様々な技法が-精神分析、来談者中心療法、ゲシュタルト療法、家族療法等々-展開されてきた。ロジャースのエンカウンター・グループも来談者中心療法の流れをくみ、メンバー一人一人の持つ自己実現傾向、すなわち自分のアイデンティティを確立させようとする傾向を発揮させようとする技法である。そしてフアシリテ-クーは、グループ場面で生起する多種多様の感情を見極め、受け止め、フィードバックする訓練を受けている.その意味でエンカウンター・グループは、国際紛争場面、あるいは歴史的な対立の当事者の持つ否定的な感情に介入し、意識の変容をもたらす可能性を持った技法であるといえ977