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概要

satoh

第8回優秀賞うか。確かに歴史や民族というものを理解しなければ紛争の当事者の行動の理解には至らないだろう。しかし、理解に必要なものだけがすべてを規定する要因であるとは限らないOどんなに歴史的必然があろうと、何かを具現化・行動化するか否かは、ひとえに個々人の主体性、すなわち感情と意思にかかっていると臨床心理学では考える。例えば、社会党の浅沼書記長の暗殺という事実一つとっても、暗殺を実行した青年に様々な外圧がかかっていたとしても、その青年にとってその行動は、主体的な、即ち彼の6)感情と意思に基づく行動だったのである。ゆえに、連鎖としての紛争は決して歴史的必然ではなく、個人の感情に負うところが大きいと我々は考えるのである。そのような個人の感情に基づく国際間の、あるいは人種間、民族間、宗教間等の感情的対立に、我々はどう対処していくことができるだろうか.これを問題として次章以降で検討していく事とする。第二章個人・民族・歴史の心理学的理解一歴史に根ざす感情を個人的文脈で理解する手がかリー臨床心理学は従来個人の人格や行動の変容を扱ってきた学問である。そこでは当初、異常な人格や行動を対象としたが、次第に人間の健康な人格の発達や形成に目を向け、人間の発達段階にはそれに応じて発達課題があり、人格の成長にはその発達課題を克服していくことが必要であることが分かってきた。この発達課題の研究を通して明らかになったことは、人間の人格が個として独立したものとなるためには、自分が何者であるか、何をするために生きているのかということについての模索を行い、自己の存在の意味づけをする必要があ.るということである。この自己の意味づけの重要性をはっきりと理論化したのがエリック・エリクソン(ErikErikson,9占9