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概要

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世界経済の研究のための「世界開発経済研究所」(WINDER)の設立は極めて大きな成果である。また、「食糧政策の立案プロセス合理化」の研究など飢餓、貧困に関する研究にも大きな成果がある(往16)。「人類のすくなくとも八分の-が慢性的な栄養失調に悩まされているという現実、地球資源の手あたり次第で無謀な開発が限界に近づきつつあるという現実、そして経済成長だけにもとづく開発戦略が突放でしかなかったという現実」に早くから注目してきた(注17)国連大学こそ、複雑に絡み合う開発と環境という両問題にバランス感覚を保持して研究を深化させられる研究機関である。「環境問題と南北問題とが重なり合った場合、エコロジカルな危機意識は、かえって南北格差を固定L、悪化さえする危険にむすびつく」(注18)という指摘は、先進国が一方的に展開するグローバリズムの政策の影の部分をえぐり出している。国際的協力による環境問題解決を追求する場合にも、たとえば大気汚染と水質汚濁に関して世界共通の基準を設けることはできない。先進国と発展途上国で力点の置き方が異なる環境と開発というテーマをリンクさせて取り組むことこそ、本当の意味での「人類」(富める者も貧しい者も)のための問題解決が可能となる。その点で、国連大学の大型環境問題プロジェクトとして動きだLた「地球の変容の人間的側面」(HDGC)が、これまで主として自然科学の領域であった環境問題に、世界規模の社会科学的視点を導入している(注19)ことには大きな希望がもてるoLかも、HDGC会合において「気候変化と発展途上国のエネルギー政策」「産業の再編成と持続可能な成長」「倫理と環境政策」など、政府間協議で調整のつきにくいテーマに挑んでいる(注20)ことは、国連での条約作りという形で、すべての国が納得のできる合意に達するために、大きな貢献となりうる。特に、先進国からの環境問題解決論が強力に唱えられている現在、発展途上国の視点からの環境問題解決についての研究促進を期待したい.「平和、安全、紛争解決、および世界の変容」とのテーマの中で扱った「紛争の根源を884(注16)『WORK IN PROGRESS』Vo1.9,No.1(一九八五年一二月)、七頁o(荘17)前掲書,二頁。(注18)坂本弟和『地球時代の国際政治』(岩波書店、一九九〇年)、二八二頁。(注19)『WORK IN PROGRESS』Vol.12,No,1(一九九〇年二月)、-頁o(注20)『日本経済新聞』一九九〇年九月二九日o