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概要

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つまり、紛争の原因として飢餓や貧困とならんで重視しなければならないのは、人種、民族、宗教、文化的な多様性というまさに「善悪」で割り切れない次元の問題である。民族紛争(勃発後の)解決のための大国の対処にはすでに述べてきた危険性がつきまとうし、これらの紛争原因の除去においては大国主導の対応に期待できることはむしろ少ないと言わねばならない.今日どれほど国連における大国の役割に期待していいか疑問を感じる所以である。先に述べたように、草間秀三郎氏はウイルソンの平和維持構想には大別して集団安全保障と多角的国際協力の二つがあることを強調したが、今日その「多角的国際協力」にこそ光が当てられなければならないのかもしれない。力で押さえ付けるよりも、紛争の火種となる問諒の除去に地道に努力していくためのあらゆる国際協力が重要になっているからである。ただし、人類「共通の安全保障」の視点を重視するゴルバチョフの理念が具休的行動に表れるときには、大国主導の平和維持機能は大きな力となるであろうから、一概に大国主義が役に立たないわけではない。誤解なきように補足するなら、現実主義が悪で理想主義が善であるといっているのではないo現実主義に裏付けられない理想主義は無力であるし、国益追求という国家の現実主義外交の根絶は無理である。「多角的国際協力」による紛争の未然防止というのは、一見理想主義的に見えるが、かってないほどの規模の相互依存世界に住む人類にとって、むしろそうした方策は現実的な手段と言えないだろうか。いずれにせよ、紛争の原因となる貧困の解決は、国連の南北問題解決能力に直結する問題であるo「国連開発の一〇年」(六〇年代)以来、南の北に対する交渉能力は拡大したが、「第三次国連開発の一〇年」(八〇年代)は、後発途上国にとっては「失望の一〇年」だったといわねばならない。昨年(九〇年)一〇月の「国連デー」での演説で、デクエヤル事務総長は、いみじくも882