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概要

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強圧的な政策をとるようなことはないだろうか。環境問題解決の名のもとに、発展途上国の開発が力で押さえ付けられることはないだろうか。テロ防止の名のもとに、ある組織が不当な制裁を受けるようなことはないだろうか。分離・独立運動が一方的に弾圧されるようなことはないだろうかOつまり、我々は、米ソの地域紛争・テロ、環境-の対処が、直接的利害の上でも、また道義的力の回復という点においても、両国の国益に合致するからこそ、それらに積極的に取り組もうとしている側面を忘れてはならない。現在米ソの外交目標が勢力拡大競争から、現状の椎持、固定化の方向に転換している点を重視すべきである。一九六〇年代に米ソ平和共存と言われたころ、神谷不二氏は「平和維持が、単なる現状維持であるならば、集団安全保障機構は一種の集団抑圧機構に堕する。国連を神聖同盟たらしめないためにどうするか、これこそ国連が平和維持機能を増大するにつれて解決をせまられてゆく最大の課題であるといわねばならない」と指摘した(注11)0そして最近、非同盟諸国のまとめ役となっているマレーシアのイズマイル国連大使が「重要事項はほとんど五常任理事国が密室で決めるようになっている」(注12)と不満をもらし、波多野敏雄・国連代表部大使が「湾岸問題で国連が次にいつ、どんな決議案を出すのかさえ、常任理事国でないとなかなかつかめないのです」(注13)と語っている。湾岸危機の解決をめぐっても、非同盟諸国では特に「大国主義」の動きを警戒するムードが強まっていると言われており,例えば、途上国で構成する「七七カ国グループ(G77)」が、昨年一〇月三日に国連本部で外相会談を開いて独白に湾岸危機について話し合うというような状況になっている(注14)0だが、「平和は欲しいが、大国の専制はいやだ」というのはまさに無いものねだりかもしれない。そもそも安保理機能を核とする集団安全保障構想は、国際連盟が「危機の二〇年」に有効に対処できなかった理由の一つとして、主要国の不参加と強制力の不足という問題があったことを踏まえたものである。したがって、「魂のない専制政治が善の萌芽を880(江11)神谷不二『現代国際政治の視角』(有斐閣、一九六六年)、二四七百。(注12)『E]本経済新聞』一九九〇年一一月一一EIo(注13)『朝El新聞』一九九〇年一二月二七El。(往14)『日本経済新聞』一九九〇年一・〇月四日、夕刊。