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概要

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三、 「ブレイクスルー」今日、国際社会には有効な手だてが打たれないまま事態がどんどん進行している問題も多く存在する。これらの問題は、相対立する要請や、複雑な現実の下に深刻なディレンマに陥っていて、有効な処方等が出せないように見える。その結果、「袋小路に入った」問題と言ってよいであろう。例えば熱帯雨林の保護の問題である。この場合には「開発」と「保存」という二つの相容れない要請が問題の処方等を書くことすら難しくしているD確かに、インドネシア政府がジャワ島の人口過密を解消するためにカリマンタンなどの過疎の島に大規模な移住を行おうという「トランスマイグレーション」計画を実施しようとする動機は理解できる。しかし、一方でこの移住のために毎年25万-タタールもの熱帯雨林が伐採されているのである。多くの場合、環境保護論者にとっては「国家主権」が壁となる。自国の森林がいかに貴重なものであっても、開発のためにそれを破壊する自由も国家は持つというわけである。実際、いわゆる「先進国」はそのようにして今日の文明を築き上げてきたわけであり、発展途上国に「木を切るな」ということは「先進国」のエゴであると思われても仕方がない面もある。しかし、すでに地球上の熱帯雨林の40パーセントが失われた今、熱帯雨林の保護が全人類にとって死活に関わる大問題であることは、言うまでもない。多くの人の努力にも関わらずこの問題に有効な処方等が見られないのは、結局上にみたように「開発」と「保護」、「国家主権」と「人類共通の利益」といったディレンマのために問題がいわば袋小路に入っているからである。問題が袋小路に入った状況が続くと、問題の深刻さが何らの方策も打たれないままどんどん進行するばかりではなく、様々な悪影響が生じてくる。その中で最も重大なのは、当該の問題に取り組むこと自体に対する一種の懐疑主義が醸成されることであるOその結果、問題に関心があり、また能力もある人々がこれら緊急を要する問題に取り組792