ブックタイトルsatoh

ページ
791/1034

このページは satoh の電子ブックに掲載されている791ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

satoh

第7回最優秀賞しかし、ここではもう一歩進んで、私はこのような紛争の解決のために国連大学が「有権的な事実の摘示」とでも言うべき活動を行うことを提案したい。国際紛争は、歴史的、あるいは社会的事実の認定をめぐって争われることが多い。ある時には一方が自分に有利なように「事実」を解釈したり、不利な「事実」の存在を無視することもある。このような場合、「第三者」が客観的にみた紛争の歴史的経緯や現状を摘示することは、紛争解決にかなり有効なのではないだろうか。私が提案したいのは、ある紛争が起こったときに、国連大学がその紛争の歴史的経緯、社会的状況、双方の主張の背景についてのできるだけ客観的な事実を、なんらの価値判断をも加えずに、「プレス・リリース」というような形で公表することである。これが私の言う「有権的な事実の摘示」である。国際的な法律関係の決定を担当する機関としては国際司法裁判所がある。しかし、ここや国際仲裁裁判所に国際紛争が付託されることはまずないといってよい.現実の国際社会は客観的に存在する「国際法」によってというよりは、その時々の各国の政府による「意思決定-政治的決断」によって動いているoLたがって、国際的司法機関による調停が多くの場合有効性を持たないのは当然である。一方、国際政治における意思決定は、紛争についての一定の事実認識に基づいて行われる。各国の政策決定過程でますます重要なウェイトを占めるようになってきた「国際世論」も、マスコミ等を通して得られる「事実」に基づいて形成される。私は、このような国際政治のダイナミックな意思決定における「事実」の提供者として,国連大学が活動することを提案したいのである。「事実」と言っても、それはむろん一種のフィクションであって、事態を見る立場によって「事実」の内容も変わってこよう。従って「客観的な事実」というものは本来存在しないoLかし、一方で、国際紛争においては「主観」しか意味がなく、「客観的」な真実ち,正義も存在しないということになれば、国際政治は相対主義の泥沼となってしまうであろう。789