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概要

satoh

第6回最優秀賞1969年、当時の国連事務総長、故ウ・タント氏は、平和と人類の進歩に貢献する、頁の意味での国際的な大学の創設を提案した。これを受けて設立されたのが国連大学である。したがって、国際平和なくして人類の存続は保証されない今日の核時代にあって、平和-の戦略こそ、国連大学にとって最高の優先度を与えられるべきテーマである。しかしながら、平和の意義について深く考えれば考えるほど、現実とのかい雛の大きさに絶望を禁じえないのは、ひとり筆者だけではあるまい。国連40年の歴史を顧みても、局地的紛争は依然としてあとをたっていない。研究成果の現実的妥当性がすぐ1問われるせいか、我々の世代で平和に関する研究を手がけようとする人はほとんどいないようである。E]本の大学の講座にも平和学というようなものはないらしい.Lかし、だからこそ、新しい魅力的な分野として平和の学を樹立する必要力士ぁり、国連大学こそがその中核的研究推進機関とならねばならない。平和はまさに国連大学の存在理由にかかわるテーマなのである。平和の学には、暴力の根源を形而上学的に問いつめていくソフト重視の方法と、武器や防衛設備などの-ード重視の方法と2通りがあると考えられる。世界連邦政府=の樹立と軍備撤廃はその解答の一例であろう.しかし、これらはともに破壊をその手段にしている。すなわち、主権国家や武器の破壊を経由して平和という状態にたどり着こうという、相当な荒療治を要求するものである。これはちょうど、臓器にできた悪性の腫ようを外科的方法で除去しようとするの忙似ている。その過程で臓器本体の機能がそこなわれて患者は死ぬかもしれない。ところで、紛争をガンだと考えれば、ガンの遺伝子の活動を抑制する免疫学的方法もありうる。免疫化学療法では効能が弱すぎてガンの増殖が抑え切れない場合や強力にききすぎて副作用で患者が死ぬ場合もありうるだろう。人間は言語などのコミュニケーション手段を有しており、紛争解決の手法を親から子-と伝えていく能力がある。暴力的行動をしないという情報は人間のDNAには書き込まれていないにしても(もし書き込まれているとしたら戦争は起こり得ない=)、コミュニケーション手段という一種の人工的遺伝子のおかげで、暴力を抑制するソフトウェアを後の世代ほど大量に蓄積しう681