ブックタイトルsatoh

ページ
677/1034

このページは satoh の電子ブックに掲載されている677ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

satoh

第6回最優秀賞べきであろうが、個人と個人との関係をベースに「地球はひとつ」という人類的意識まで高めるというボトム・アップの方向をめざす理念も構築するべきであると考える。ところで、現代社会の特徴は、特に先進工業諸国にあっては、人と人との関係がかつての血縁、地縁からメディア媒体による情縁的関係にシフトしつつあることが民俗学者によって指摘されている。都市化の進展や情報・通信装置系の普及がそうした現象を加速しているとも考えられるが、だからといって仮想的な情縁関係によって空間的共同意識たる地縁関係が消失してしまうわけではあるまい。東京における下町的な祭ブームは地縁関係の復活さえも感じさせる。筆者は、ニューメディア、パソコンネットワークといった情報機器の普及によって、個体間の心理的距離感が縮小し、地縁を超えた新しい関係が情報の交信を通して形成される一方で、そうしたグローバルなアクセサビリティを基盤にしたグローバルな地縁関係の認識が新たに形成されるものと期待したい.仮想的情縁関係はあくまでベールにすぎず、そのカウンターパートとして実在感をもった土着的意識が地球の全地域をカバーすることになるのではないか。こうしたグローバルな土着感が育っていけば、存在感が希薄になりつつある国境にかわって、地球に住み種としての人類という新しい地球人の自覚-と繋がることにもなろう。月面での作業を完了して月を離れ、地球-帰還する軌道に乗った宇宙飛行士は、宇宙船の窓からふと目に入る地球のあまりの美しきに心を奪われたという。地球からはるか遠く離れた宇宙船から地球を見て初めて身近なものとして地球を感ずる、人間の心理とは何と逆説的なものだろう。ある時、自己と地球との新しい関係を突如として感ずるということがすべての人にとって可能であるとはいえないであろうが、地球という存在を身近なものとしてつかまえる感覚を若い頃から養うことが地球社会を迎える条件であるといえないだろうかO新理念の追求によって、こうした地球感覚が醸成されていくことはいうまでもないことである.占75