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概要

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勢は全くと言ってよいほど整っていない。すなわち、環境問題に興味を抱く生徒たちが、実際に環境破壊がどの程度進行しているかを、自分自身の足で歩いて見定め、自分の目で確かめ、その上で環境保全のために自分たちには何ができるか、どうすればよいかといったことを考えるというようなプランは、なかなか授業の中では実行されないのである。実社会-の「参加」あるいは「経験」の機会の不足という今日の教育の欠陥は、たとえば、難民問題においても、日本人の対応の遅さ、まずさという形で表われた。第2には、 1月の上旬に、共通一次試験が行われるという事情もあり、社会科では、ふつう教科書の最終章に記述されている、現代国際社会をめぐる諸問題が、ほとんど授業で取り上げられない。共通一次試験の実施時期が早すぎることに対しては、教育現場からの批判も強く、来年度から実施時期を繰り下げることが決定された。しかし、社会科における「現代」軽視傾向は、入試時期を少々繰り下げても、大方変わるまい。1つには、「現代」に起こる事柄については、まだ歴史的評価が定まっていない場合も多く、出題側大学教授の間で、意見の相違があることも起こりうる。従って、出題にはあまり適していない。出題されにくいところよりは、出題される可能性の高い箇所により大きな力点を置くのが、現在の教育である。もう1つは、現代に起こる多元的で複雑な諸々の問題を系統立てて、しかも客観的にわかりやすく教えるには、教師の側に、かなりの力量が要求されるからであろうoかくして、マルクス・アウレリウス・アントニウスが何年にどんなことをしたとか、フランス革命の全プロセス、たとえばロペスピェ-ルが何年に処刑されたとかを、実に正確に覚えている生徒は多いが、今日、地球上では、 1日に1万人以上もの子供が栄養失調等2)の理由で死んでいるとか、先進国からの武器輸出額のうち、 7割は開発途上国に向けて行3)われているものだといったことは、意外と生徒たちに知られていない。私は、大学4年次に、母校の高校において社会科の教育実習を経験した。4年ぶりの母校では、共通一次試験を意識した教育過程、教育内容が確実に定着していた。教育実習を通じて感じたことは、現在の教育がいかに知識の習得に傾いているかであ538注2) (肘) El本ユニセフ協会,『なぜ南は飢えるのか』3ページ注3)森治樹監訳『プラント委員会報告南と北-生存のための披略』日本経済新聞社,1980,157ページ