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概要

satoh

第5回優秀賞第2章今日の学校教育が抱える問題点第1節教育プログラムの多様性の欠如デビーの場合、ふつう小学校6年間で学ぶべき基礎学力を全く持たぬまま中学校1年に編入され、この春、クラスの仲間と共に、転校先の区立中学校で卒業を迎えた。彼女の受け入れと進学の問題は、はからずも、今日の日本の教育におけるさまざまな問題の所在を明らかにした。まず言えることは、現在の学校教育制度は大学を除けば、外国人が共に学ぶということを全く前提にしていない。デビーの話によれば、どの担任教師も皆、彼女には大変親切であった。彼女がクラスに溶けこめるよう、様々な配慮や尽力がなされたようだ。しかし、今日の過熱した受験中心の教育においては、小学校の学力すら持たない一人の、しかも日本人でない生徒のために、とても授業時間をさく余裕はない。デビーをはじめ、難民の子らは、決して知能が低いわけでも、理解力が劣っているわけでもない.むしろ、時折、驚くほどの理解の早さを見せたり、鋭い洞察力を感じさせたりする。向上心も強いoただ単に、不幸にしてこれまで教育を受ける機会が与えられなかったにすぎないO教師たちは、このことを充分認識しているだろう。けれども一人の生徒が理解できるまで授業を中断させるわけにはいかない。ゆえに、彼女は九九も満足に覚えていないまま、二次方程式や二次関数の授業を受けていた。デビーの場合、ほとんど授業内容を解することができなかったにもかかわらず、卒業に必要な出席目数が満たされているという理由で、学校長は卒業を認定した。留年することを許されなかった。こうした傾向は、何も難民の子に限られたことではない。あまりにも過熱した受験重視の教育プログラムが多く落ちこぼれを生み、彼らのやり場のないはけ口は、校内暴力、万引き、シンナー等の形で噴出し、既に大きな社会問題と化している。535