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概要

satoh

なり、一時間半ほどの間大混乱を来たしたことは記憶に新らしく、日常生活の中で樋めて身近な電話や電気の故障と、それに付随して起るであろう交通の麻痔、悪賀な犯罪の発生、各種事務の混乱を思うと、コンピューター化された都市機能の弱きと言うものをまざまざと見せつけられる思いがする。然もそうしたトラブルの原因が、青大将(舵)一匹のいたずらであったり、小鳥の巣がなせる業であったりして、高度技術やメカがあざ笑われているかの感を抱くことさえある。しかしそんなお笑い草で事が終ればまだまだ救いがあるが、それがもし、核兵器にかかわる人間の誤ちや、機械の誤作動による事故の事を思うと、肌に粟を生じないでは居られない。我々人類は、開発、発達、進歩などと、甚だ耳ぎわりの良い言葉に酔いしれて、常に便利なるものを追い求めて来たのであるが、その結果として自らが手にするのは果して何であろうかと、ぼつぼつ振り返ってみる時に来ているのではないだろうか。三、気がつけば剣が峰私は丁度この稿を書いているさ中に、ふと次のような文章に目をとめて胸をつかれたOトー行きどころがない、という感じが折にふれて胸中に浮かぶ。これは自分の年齢とか、立場とか、属している企業組織とか、業界とかと言ったこととは関係ない.しいて言えば、このまま科学技術と経済が進んで行った場合に、世の中がどうなってしまうかについての分らなさ、あるいは漠然とした不安である・-・。」との一文である.しかもこの一文が堤清二氏の書かれた文章の一部であることを知って、私は重ねて強い衝撃を受けた。大きいことはいいことだ、とばかり、突走って来た競争社会の先頭に立って、順風満帆の西武王国の頂点にある人が、「行きどころがない」と言うその心情の底には.或いは次元は違うかも知れないが、私が幼年の頃の記憶の中のお豆腐屋のおばさんを思い出している、その素朴な感情とどこか相通ずるものがありはしないだろうか.490