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概要

satoh

第2回佳作クスと呼ばれるシミュレーション法によって、世界の方向をグラフに表わしたわけである。分析の対象は、工業化、人口増加、栄養不足、天然資源の枯渇、環境の悪化、の五つである。経済学では従来、外部要因とされてきたものを含んでおり、学際的システム研究であるのは明らかである。また、「動向は、月または年単位よりも、10年または100年単位20)ではかられて」おり、長期的変数を分析している.さらに現実の世界の資料から出発しており実証的要素をもちながら、資源は有限であるとしてゼロ成長を提唱するという価値判断、見解発表をしており、事実上政治的要素も含んでいる。これらの性質は多くの世界モデルに共通したものである。さて、このモデルによる報告は世界中に大きな反響を呼び起こした。この中で経済学者21)の反応は、圧倒的に否定的であった。公文俊平によれば、それは技術的なものと価値的なものの二つに分けられる。前者には、次のようなものがある。第一に、構造の強固さを調べる感度分析にこのモデルが耐ええない点である。すなわち、前提条件をわずかに変えただけで結論が大きく異なると思われる。第二に、解および個々の関係式についての現実のデータによる検証が困難である点である。第三に、世界レベルでの政策主体を前提にしている点であるo批判的見解では、この仮定は非現実的とされる。第四に、変数のアグリゲートが極端であり、地域差を無視している点、第五に、人間の適応能力や価値観の変化に対する考察が充分でない点である。次に後者の批判としては、悲観的な終末論であるとか、世界の不平等を現状のまま放置する結果となるなどがある。批判の中にはもっともなものもあるが、全体的には感情的な反発も強く、反応に対するローマ・クラブの予想はやや楽観的過ぎたといえるかもしれない。しかし、基本的には世界をはじめて一つの全体として把握しようとした試みとして高く評価されるべきであろう。公文は創造より批判の方がはるかに容易であるとして批判を退け、1936年のケインズ革命に匹敵する視点の変革であるとしている。経済学にとっても再生の手がかりであることは、明らかなように思われる。第二に,ラテンアメリカモデルについて検討したい.このモデルは76年にアルゼンチン注20)D.H.}ドゥズ他(大束監訳)『ロ-ヤクラブ「人規の危機」レポ-ト成長の限界』ダイヤモンド社、昭55、34版、 P.8住21)公文俊平『転換する世界』講談社、昭53 183