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概要

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第2回佳作べきことは複合領域的なプロジェクトに参加することである。そして、そのプロジェクトの中での経済学者の役割は、基本的にはリアリティ・テスティングを行なうことであろう.プロジェクトの具体的な試みの一つである世界モデルは、一面きわめて技術論的なアプローチをする。たとえば、ローマ・クラブの第2番目の世界モデルであるメサロピッチ・ぺスチル・モデルでは、約10万本の関数式が用いられている。また、トータル・システムズ・アプローチとして、個人の価値観や規範、社会政治的配置、人口、経済学、農業技術、生態学を一つのシステムとして考察することを前提としている。また、明示的に価値判断を取り入れており、仮にそのバイアスが大きかった場合、モデルおよびモデルからの結論としての提言に重大な影響を与えるOこれは、世界モデルが長期的な変数を扱っている点からもいえることである。世界モデルの具体的な検討は第3節でするとして、ここで述べたいのは、世界モデル研究プロジェクトの中で経済学者がなすべきことは、そのモデルに含まれている経済モデルの部分の整備のみではなく、モデル全体の思想的視点について、常に現実との対応を,Lがけることであるという点である。それでこそ経済学者は信頼性を取り戻しうると思われる。また前述の「問題複合休」や「四つの落し穴」の箇所で触れた二つのアプローチに関連して、世界モデルプロジェクトにはいくつかの問題点があり、それがもう一つの経済学の課題を示している。第一には、価値についての共通認識の問題である。すなわち、たとえば西欧合理主義の限界が指摘され、開発における適正技術の必要性や開発と自由を対立するものとする考えの欠陥などが明らかにされたが、これによって西欧合理主義がすべて否定されるかといえばそうではない。少なくとも、西欧の人びとにとっては西欧合理主義は地域の発想に基づく考えであり、自分たちに合った考えなのである。本来、思想や価値観は風土や伝続、文化、民族性などと密接な関係にあり、これらをすべて統合しようとすることは不可能であり、また望ましいことでもない。統合化は、人類を画一的な人間の集まりにすることでは決してない.したがって、世界共通の価値観はきわめて横やかなものにならざるをえないが、それが定着するには多くの労力と時間がかかり、緊急性とは相いれ181