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概要

satoh

国際通貨問題についてはこれまでも数多くの研究がなされてきたが、モースは将来の通貨体制について詳細な分析を発表している。モースは分析の対象として、次の四つの体制をとりあげている。すなわち、第一に国際中央銀行体制、第二に自立的国民経済間の分権体制、第三に地域通貨圏体制、第四に階層的体制である。まず、第一の国際中央銀行体制であるが、理念的には望ましいとされるこの体制にモースはやや懐疑的である。すなわち、分配効果と紛争解決手続においても問題が存在する上に、各国の見解の調整の困難さを考慮すると実現可能性が少ないとしている。「危機に直面している各国が、最後のよりどころとして貢の国際的貸し手を創設しようと決意するような状態が、中央集権体制によって創り出された場合すら、危機の要因が長期的に最優先祝されるかどうかは決して明ら6)かではない」というわけである。含蓄ある見解ではあるが、だからといってその将来-の方向性まで否定してしまうのはやはり早計であろう。また、この間題は後述する地域通貨圏体制に関連して検討するECでも重要な要素となっている。さらに第2節においても人類の意思および価値判断と関係してくる。断定はできないにしても、各国の利害が調整できないために現実性に乏しいという発想は根本的に転換されるべき時点に人類は達して●●いるのかもしれないO「まず主権国家があり、その総計として世界があるという古典的・■●在来型の発想ではなく、まず世界という一つの人間社会のシステムがあり、そのサブシス7)テムとして、国家その他さまざまのレヴェルの集団が存在する、という視座に立つこと」が必要なのかもしれないのである。この間蓮については後述するとして、第二の自立的国民経済間の分権体制については、モースは否定的である。機能的にも国際中央銀行体制と比較した場合著しく落ちるとしている.分権体制とは、現在の体制から基軸通貨をなくしてさらに各国の個別性を強めたものであり、現在の傾向に正面から対立するものとなる。この体制は、現体制の「準備通貨センタ-が貨幣鋳造利得と特別な自由を享受しており、8)この貨幣を使用する国の犠牲に基づいた体制に性かならない」という性質を改善することをめざしているが、準備通貨の喪失によりそれまでの共同利益を失うことになろう。世界の相互依存性が高まっている現在では、得るものより失うものの方が多いと思われる。第注6)E.L.千-ス(田村訳)「政治的選択と新しい通貨体制」(『国際通貨体制の再編』所収)日本ブリタニカ、昭55注7)坂本義和「まえがき一世界秩序モデルの研究-」(『経済学と世界秩序』所収)岩波書店、昭53、vi174注8)E.L.モース、上掲書,P.161